BIRDER-無敵のペンギンガイド|【おすすめの本】

      2017/04/14

BIRDER(バーダー)2016年8月号 無敵の「ペンギンガイド」

野鳥専門誌、真面目にペンギンを語る

ついに、野鳥愛好家に人気の雑誌「BIRDER」からペンギンの特集号がでた。古くからの愛読者は、この意外な選鳥に驚いているかもしれない。

「BIRDER」の歴史は古い。その前身は、1987年に創刊された「日本の生物」という雑誌である。91年に誌名を「BIRDER」に変え、野鳥の専門誌として再スタートを切った。
鳥について“どこよりも詳しく”を自負するこの雑誌が、かねてよりペンギンに注目していたとしても不思議はない。全18種類のペンギンのうち11種類が飼育されるほど、日本人はペンギンが好きなのだ。しかし残念なことに、北半球に位置する日本に野生のペンギンは生息していない。

編集部の葛藤が目に浮かぶ。
「大多数の読者にとって、ペンギンは動物園や水族館で目にする可愛い鳥。正直言って、野鳥っていう印象はないよな。」

しかし、今回の特集で「BIRDER」はついに沈黙を破る。

ペンギンの特集が組まれた背景には、日本での繁殖活動が確実に実を結んでいることがあるかもしれない。皇帝ペンギン・イワトビペンギン・フンボルトペンギンなど絶滅危惧種のペンギンのヒナが、毎年のように日本で誕生しているのだ。国内で生まれたヒナたちは、二世、三世へとその命を繋いでいる。今や日本は、世界各国から多くのペンギン研究者が訪れる“ペンギン先進国”なのである。

日本の研究や技術が、世界の野鳥を救う。その誇りを胸に、日本の野鳥に寄り添ってきたバーダーがペンギンについて語る。タイトルに「無敵の」と銘打つほどに、これは鳥類雑誌がそのプライドにかけて英知を詰め込んだペンギンガイドである。ここはひとつお手並み拝見。「BIRDER」の趣旨に賛同したペンギンのスペシャリストたちによる「ペンギン講義」に、静かに耳を傾けよう。

野生のペンギンを訪ねて

「野生」という響きに、動物好きの心は揺さぶられる。かく言う私も、野生のペンギンを一目みたいと常々思っている。
寒い地域に生息するイメージが強いペンギンだが、実際はアフリカから南極までその生息域は幅広い。そこでBIRDERは、野生のペンギンを観察できる地域の中から3つを厳選し、ツアーの内容をレポートしている。

南極のペンギン

世界最大のペンギン「皇帝ペンギン」が暮らすのは、日本から遠くはなれた南極の地。野生の姿を一目見るには、それなりの覚悟が必要だ。それでも、ペンギンなどの野生動物を見るために組まれる極地ツアーは、キャンセル待ちが後を絶たないほど人気がある。本誌では、皇帝ペンギンを間近に観察できる南極ツアーの様子を、26回の南極訪問歴を持つ伊藤栄治郎氏が紹介している。

オーストラリア フィリップ島のペンギン

コガタペンギンの大人の写真

コガタ

オーストラリアは、日本から一番アクセスのよい野生のペンギン生息地。オーストラリアに暮らすのは、コガタペンギンという種で、40〜50㎝程度の大きさだ。メルボルンのフィリップ島は、周辺に3万羽以上のコガタペンギンが生息し、ほぼ確実にペンギンを観察できるスポットとして名高い。夜行性のコガタペンギンが、夕刻の闇に紛れて集団で海から上陸してくるのだ。これを「ペンギンパレード」と呼ぶ。本誌では、オーストラリアの野生動物ツアー「Cassowary Tours」ガイド松井淳氏が、ペンギンパレードの詳細をレポートしている。

☆コガタペンギンの関連記事
メルボルン観光|フィリップ島のペンギンパレード

フォークランド諸島のペンギン

フォークランド諸島は、ペンギンを観察できる最果ての島だ。この島で暮らすのは、ジェンツーペンギンミナミイワトビペンギンマゼランペンギンキングペンギンの計4種。非常にバラエティー豊かなラインアップである。
記事の寄稿者である井上大介氏によれば、日本の年末年始がちょうどペンギンの子育て時期と重なるという。
フォークランドは、イギリス領ということもあり、バーやレストランが充実しているエリアもあるそうだ。ペンギンコロニーを間近にバーで酔いしれたいという私の夢も、ここなら確実に叶えられそうである。

 

Text:水鳥 るみ(フリーランスライター)

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