死ぬまでに見たい!絶景のペンギン|澤井聖一【おすすめの写真集】

      2016/10/25

死ぬまでに見たい! 絶景のペンギン

野生のペンギンに会いたくなったら、どこに行けばいいだろう。そう自問した時に、私が真っ先に思いついた場所は南極だった。氷の上でおしくらまんじゅうをしている皇帝ペンギンのヒナたちが目に浮かぶ。
しかし、いくら交通網が発達したとはいえ、南極が遠い事に変わりはない。南極に行くには、まず南米のチリかアルゼンチンまで飛び、そこから船や小型機を使って上陸するほかない。少なく見積もっても2週間はかかる旅になりそうだ。

「いつか行ってみたい。いつかは。」ため息まじりにそう呟いて、もっと手近な生息地を探そうとし、ふと疑問に思う。南極以外の場所で、ペンギンはどこに暮らしているのだろう。

ペンギンの住処に絶景あり

水族館や動物園にいけば、必ずと言っていいほど目にするペンギンたち。しかし彼らの故郷については、あまり良く知られていない。そんな彼らのふるさとについて、素敵な写真と併せて紹介している本がある。「死ぬまでに見たい!絶景のペンギン」という写真集だ。

氷の絶景とペンギン

皇帝ペンギン以外にも、南極周辺には様々なペンギンたちが生息する。体格が似ている3種、アデリーペンギンヒゲペンギンジェンツーペンギンは揃って長い尾を持ち、まるで兄弟のようにも見える。写真集の中で、このペンギンたちは度々登場する。
流氷に乗って休んでいるアデリーペンギンは、流氷があまりにも巨大なため、ごま粒のように小さく写っている。
見た事もないほど青い氷山の一角では、ヒゲペンギンが遠くの海を見つめて佇んでいる。

南極周辺は全て氷で覆われていると思いがちだが、比較的穏やかな気候の島々も存在する。そんな島々の風景が良くわかるのは、南極近海に広範囲に生息するジェンツーペンギンの写真である。流氷の中を泳ぐショットがある一方、日差しが降り注ぐビーチの上を散歩ているものや、草むらに巣を作っている様子が見てとれる。

森の絶景とペンギン

さて、南極以外では一体どんな場所でペンギンを見る事ができるのだろう。答えは、写真集の副題が教えてくれる。アルゼンチンや、ペルー、チリ、南アフリカに至るまで、まさに「青い氷の国からエメラルド色の南の島まで」がペンギンの住処なのだ。

ジェンツーペンギンのように、様々な島に分布する種がいる一方、その土地固有の種も存在する。最も顕著な例では、キガシラペンギンという種が挙げられる。

Beautiful Yellow-Eyed Penguins near Moeraki.

Pen-y-bryn Lodgeさん(@penybrynlodge)が投稿した写真 –

キガシラペンギンはニュージーランドの南島に暮す固有種で、繁殖つがいの数は2000つがいにも満たないといわれている。人に慣れることは決してなく、そのため水族館などの人工的な場所で暮すことができない。頭の毛は黄色く、目も同じく黄色をしている。そのため英名では、イエローアイドペンギンと呼ばれる。
「絶景のペンギン」の中にもいくつか写真が掲載されているので、是非見て頂きたい。木々が生い茂る森の奥深くにひっそりと写るその姿は、まるで妖精のように儚く美しい。

ビーチの絶景とペンギン

最後に、写真集の表紙になっているペンギンについてご紹介しよう。これは南アフリカで撮影されたもので、名をケープペンギン(アフリカペンギン)という。
アフリカ大陸とペンギンのイメージがあまり結びつかない方もいるかもしれないが、気温が比較的高い場所で暮すペンギンも存在するのだ。写真集の中にも出てくるケープ半島の「ボルダーズビーチ」には、近くでペンギンを眺めたり、一緒に泳いだりできる場所があるという。

meet my new friends 😍🙈🐧 #pinguins #bouldersbeach

Catherine Schwartzさん(@catherinesixv)が投稿した写真 –

今でこそ人間とペンギンは仲のよいイメージがあるが、歴史を振り返れば、ペンギンたちのこれまでの暮らしは決して楽なものではなかった。
1800年代〜1900年代にかけて、人間はケープペンギンを大量に捕獲し、その住処もまた破壊した。ペンギンの数は少しずつ回復傾向にあるものの、元々の生息数には遠く及ばないのが現状である。
これはケープペンギンに限った話しではない。世界中のほとんどのペンギンたちが、絶滅の危機に瀕している。
彼らは翼は持つが飛ぶ事はできず、捕食者や侵略者に対抗する手だてがない。あるものは氷の壁に拠り所を求め、あるものは断崖絶壁の岩場で子を育て、ある者は森の奥でひっそりと暮す。

ペンギンのいる場所が“絶景”であるのはそのためだ。
彼らは、彼ら自身を厳しい自然環境に適応させることで、自分を守り、家族を守ってきた。そこはペンギンを餌にする動物はもちろん、人も容易には近づけない。

ペンギンの住処には、守るべき自然がある。ペンギンを見守ることは、私たちが暮らす地球を、その未来を守るということなのだ。

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 - ペンギン本

        

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