「ウォレスとグルミット」の傑作シリーズ丨ペンギンに気をつけろ!
2016/10/18
悪党ペンギン「マッグロウ」 VS 忠犬「グルミット」
発明家のウォレスと忠犬のグルミットという愉快なコンビをご存知だろうか。イギリスのアードマン・スタジオが手がける「ウォレスとグルミット」シリーズは、アカデミー賞を何度も受賞した名作アニメーションで、世界中に根強いファンを持つ。
このアニメは、クレイアニメーションの1種に分類されている。静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしながら撮影し、あたかも被写体が連続して動いているように見せるのだ。
さて、皆さんに是非ともお伝えしたいのは、この「ウォレスとグルミット」シリーズにペンギンが登場しているという事実。1993年に登場した1羽のペンギンは、忠犬グルミットとの大決闘の末、世界で最も有名な悪党ペンギンとなった。見事にアカデミー賞短編アニメ賞を受賞し、アードマン・スタジオの歴史に名を刻んだストーリーについてご紹介しよう。
「ウォレスとグルミット」登場人物
【WEB】なんと、ウォレスとグルミットのHPがオープンしました!今年は「ウォレスとグルミット危機一髪!」にショーンが登場して20周年。ショーンにとっても、とても重要な作品です。HP→http://t.co/Y1xp5gaaD4 pic.twitter.com/zLQsUwYDjp
— アードマン日本公式ツイッター (@aardman_jp) 2015, 6月 2
■ウォレス(左)
楽天家気質の自称天才発明家。グルミットの誕生日に、リモコン動作1つで散歩ができる「テクノズボン」をプレゼントしたことが災いし、強盗事件に巻き込まれる。
■グルミット(右)
ウォレスのパートナーのビーグル犬。しっかりものでウォレスをいつもサポートする。字を読むことができ、機械工学に通じている。
Happy world penguin day, have a picture of notorious penguin/chicken mastermind Feathers McGraw #wallaceandgromit pic.twitter.com/I9lpC3x7M6 — TheAnimatedDragon (@DragonAnimated) 2015, 4月 25
■フェザーズ・マッグロウ(ペンギン)
ウォレスの貸し部屋に目をつけて、下宿人を装ってやって来たペンギン。しかしその正体は、指名手配中の泥棒。手配書に赤いとさかが掲載されているためニワトリと勘違いされているが、本当は赤いゴム手袋を被って変装しているだけ。
「ペンギンに気をつけろ!」ストーリー
あらすじ
お金が必要になったウォレスは家に下宿人を迎えることにした。そこで現れたのは1羽のペンギン。ペンギンはつぶらな瞳と気の利く素振りで、すっかりウォレスのお気に入り。居場所がなくなったと感じたグルミットは、家出を決意。
しかし、そのペンギンがウォレスの発明品“テクノ・ズボン”を改造し、ウォレスに高価なダイヤモンドを盗ませようとしているところを目撃してしまう。ペンギンの正体は、なんと指名手配中の泥棒フェザーズ・マッグロウだった。
グルミットはウォレスを助け出そうと、マッグロウを追い詰めるが…?
出展:ウォレスとグルミット公式サイト
最も有名な一幕は、フェザーズ・マッグロウとグルミットが列車の模型の上で繰り広げるチェイスシーン。緊迫のラストを、是非その目でご覧いただきたい。
ペンギン好きを代表して言わせてもらえば、この冷徹で悪賢いペンギンにも愛すべきところはある。例えば、作品の中盤でマッグロウが宝石を盗み出そうとするシーン。宝石は赤外線センサーで厳重に守られており、ミスの1つも許されない状況だ。宝石を盗み出そうと苦戦する彼は、その顔に大量の汗を滲ませる。変装用に赤いゴム手袋を被っているだけでも滑稽なのに、その手袋から大量の汗が滴り落ちるのだ。そんな可愛い姿を見て、どうして彼を憎めよう。表情はほとんど変えないだけに、彼の焦る気持ちがリアルに伝わってくる。
「ペンギンに気をつけろ!」でセリフがあるのは、ウォレスしかいない。それにも関わらず登場人物の気持ちが伝わってくるのは、表情の変化や仕草の中に、その心情を描いているからだ。ユーモアあり、バトルありの楽しい作品なので是非見ていただきたい。
ペンギン好きのイギリス人
イギリスを舞台にしたアードマンのアニメーションには、沢山の動物が出て来る。ウォレスとグルミットに登場する犬やペンギンも、イギリスと馴染みの深い動物である。
動物愛護大国として有名なイギリスでは、ほとんどの犬が室内で過ごしている。家族と一緒にソファーに座り、家族と一緒に眠るのだ。犬は家族の一員といった考えが根付いているのだろう。ゲージに入らず飼い主の膝下に丸くなって過ごす犬を、地下鉄で見かけることもある。
一方で、イギリス人とペンギンを結びつけるものはなんだろう。筆者は旅行でイギリスを訪れた際に、沢山のペンギングッズを目にし、イギリス人はペンギン好きだと確信した。陶器の皿・布・クリスマスのオーナメント・ポストカード・・・、お土産を買いに立ち寄る店の先々に、必ずといっていいほどペンギンがいた。CMなどのメディアでも、度々ペンギンが取り上げられている。下のInstagramの写真は、イギリスのキャス・キッドソンで購入したポーチだ。キングペンギンらしきペンギンがいたるところにいて、非常に可愛い。
ペンギンの生息地について詳しくなるにつれ、分かったことがある。それは、イギリスがペンギンの生息する島々を領土として持っていることだ。
その筆頭に挙げられるのが、フォークランド諸島。ここは、1982年にイギリスとアルゼンチンが領有権を争った「フォークランド紛争」の舞台としても有名な島である。この島には、マゼランペンギン・イワトビペンギン・キングペンギン・マカロニペンギン・ジェンツーペンギンの5種類のペンギンが生息する。フォークランド諸島から東に1500km離れたサウス・ジョージア島も、キングペンギンの大ルッカリーがあることで有名である。
さて、イギリス人が好きなのは犬とペンギンだけではない。ウォレスとグルミットの3作目「ウォレスとグルミット 危機一髪」に登場する羊も、イギリスと馴染みの深い動物である。これは後に「ひつじのショーン」と題してシリーズ化され、続々と新作が発表されている。2015年の夏には「ひつじのショーン バック・トゥー・ザ・ホーム」、2016年には「いたずらラマがやってきた!」と題する新たな作品が公開された。「ウォレスとグルミット」が都心を舞台にしてるのに対し、「ひつじのショーン」は田舎の牧場を舞台にしている。ひつじ以外の動物も多数登場するので、動物好きの方は是非チェックしていただきたい。
【ショーン豆知識】ショーンたちには眉毛がないから、いろいろな感情を表現するのがとても難しいらしい。普通なら眉毛で表現できることを目や耳の動きや頭の位置で伝えている工夫をしているんだそう。#映画ひつじのショーン pic.twitter.com/37DYpTGLfp
— 「映画 ひつじのショーン」公式 (@shaun_movie) 2015, 6月 19
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