鴨川シーワールド(千葉)丨卵を抱くキングペンギン
2017/04/14
目次
鴨川シーワールドのペンギン4種
東京駅からバスに乗って2時間半、千葉県鴨川市の沿岸に降り立つ。飛沫をあげて海岸に迫る波にきつい潮の香り、ギラつく太陽。粗野で荒々しいこの海岸沿いに、“海の世界との出会い”をコンセプトに掲げる鴨川シーワールドがある。
抱卵中のキングペンギン
ペンギンについての知識を深めるためには、個体数が多い水族館に行くといい。1羽でいるときよりも集団でいる時のほうが、ペンギンの様々な習性がよく現れる。
自然界のキングペンギンは、繁殖期に巨大なコロニーと呼ばれる集団を作ることで良く知られる。インスタグラムの写真は、サウスジョージアで写真家ポール・ニックリンが撮影したものだ。
「この写真の中に何匹のキングペンギンがいるか、わかるかい?」と彼は問いかける。おそらくほとんどのユーザーは、数秒も立たぬ内に「GIVE UP!!」と叫ぶだろう。1つのコロニーには、約1万羽ものペンギンが生息していると言われているのだ。
自然界の密集度には遠く及ばないが、鴨川シーワールドでもキングペンギンの小集団を見ることができる。14~15羽ほどいるだろうか。しばらく観察をすすめると、集団から少し離れた場所にいる4羽の様子が、他のものと違うことに気がついた。正座しているかのように見える独特なポーズ。体勢をじっとそのままに、周りをキョロキョロ見回して警戒してる。少しでも近づくものがあれば首を左右前後に振り、その長いクチバシで威嚇してみせる。
「もしかすると、卵を抱いているかもしれない!」そんな期待を胸に観察を続けること数十分、ついにその姿をとらえた。抱卵嚢(ほうらんのう)という腹部のだぶついた皮の下で、洋梨形の卵が1つしっかりと暖められている。
巣を持たないキングペンギンは。ヒナが生まれてくるまでの約54日間、雄と雌とが足の上で代わる代わる卵を温める。先の警戒し合う様子は、自分の陣地と卵を守ろうとしての行動なのだ。
卵を抱えていないペンギンたちは、比較的穏やかな日々を過ごしているようだ。中でも人工の雪が降り積もる場所は、ペンギンたちのお気に入りのスポットになっている。1羽のキングペンギンが、雪の上に腹ばいになって眠りこけている。
雪を枕にペンギンはどんな夢を見るのだろう。遠い故郷のコロニーや、魚の群れ・・・。ペンギンのくちばしが白い雪の中に埋もれてなお、雪は深々と降り続いていた。
換羽中のジェンツーペンギン
水槽内を急ぎ足であちこちに移動しているのは、ジェンツーペンギンだ。羽を後ろに広げてバランスを取りながら、小走りで移動する。水中となればその速度はさらに増し、カメラマン泣かせのスピードで急旋回を繰り返す。
せわしない仲間と対照的に、1羽のジェンツーペンギンが石像のようにじっとして動かない。妙に毛がモコモコとしている様子からして、換羽中のようだ。1年に1度の換羽は、全てのペンギンの成鳥に訪れる試練の時だ。水に潜ることができず、あまり餌もたべず、じっと羽が生え変わるのを待つ。そうして手に入した新しい羽のおかげで、ペンギンは水中を飛ぶように泳ぐことができるのだ。
土の上で寝そべるフンボルトペンギン
屋外にいるフンボルトペンギンたちも、換羽シーズン真っ最中のようだ。プールには抜け落ちた毛が散乱し、ボサボサ頭の2羽が何やら鳴き交わしている。
「お前、換羽の進捗どうよ?」
「あと一息ってとこだな。」
そんな会話が聞こえてきそうな、ゆったりとした夏の午後であった。
大迫力!鴨川シーワールドのショータイム
鴨川シーワールドに来たならば、海獣たちのショーを是非みていただきたい。シャチ、ベルーガ、イルカ、アシカのショーは、各々個別のスタジアムで披露される。ここでは、私がとりわけ感動したシャチとベルーガのパフォーマンスについてご紹介しよう。
最強の海獣シャチのショー
鴨川シーワールドの最大の目玉といっても過言ではないシャチのショー。見とれてしまうのは、シャチのビッグボディーばかりではない。人とシャチの息のあったプレーは圧巻の一言に尽きる。体操選手にも劣らぬバランス感覚を持つトレーナーたちが、シャチの鼻先で美しい演技とダイナミックなジャンプを披露するのだ。技が成功するたびに、その裏でどれだけの練習を重ねたのかと胸が熱くなる。
千葉の大海原を背にシャチが舞い、人が舞う。次から次へと繰り出される多彩な演技に、観客はみな惜しみない拍手を送っていた。
※特にお休みの日は立ち見がでる混雑ぶり。座席を確保したい場合は、演目開始30分以上前の入場がおすすめ。
バブルリングを連発するベルーガのショー
筆者にとってペンギンと1、2を争うほどに好きな生物、それが「ベルーガ」だ。大きな身体に似合わぬ柔和な顔立ちや、凹凸のないツルンとしたフォルム、真っ白なすべすべお肌など、好きなポイントを挙げれば枚挙にいとまがない。
ベルーガの特徴の1つに、前頭部のメロンという脂肪組織が挙げられる。これはベルーガ同士のコミュニケーションに欠かせない大切な組織で、感触は見た目通りというべきか相当に柔らかい。トレーナーがメロンにタッチすると、プルンプルンと波打つように頭部が揺れている。
ベルーガが披露するパフォーマンスは大変可愛い。口を大きくあけて、すっとしぼめた次の瞬間…出ました!人呼んで「幸せのリング」。これが見たかった。
南極のペンギンに北極のベルーガ。鴨川シーワールドは、その両者がわずか数メートルの距離にいる。水族館を巡る旅、それは世界の海を股にかける冒険なのだ。
Text:水鳥 るみ(フリーランスライター)
鴨川シーワールド(千葉)の基本情報
●鴨川シーワールドの公式ホームページ
http://www.kamogawa-seaworld.jp/
●鴨川シーワールドのペンギンの種類
キングペンギン
ジェンツーペンギン
イワトビペンギン
フンボルトペンギン
●鴨川シーワールドのイベントスケジュール
ショーのスケジュールは日によって異なります。詳しくは公式サイトへ
●鴨川シーワールドの営業時間
日によって異なります。詳しくは公式サイトへ
●鴨川シーワールドの入場料
大人:(高校生を含む)2,800円
小人:(小学生〜中学生)1,400円
●鴨川シーワールド(千葉)へのアクセス
【東京→鴨川シーワールドの場合】
・電車(2時間)
JR東京駅→(特急わかしお)→JR安房鴨川駅→(無料送迎バス約10分)→鴨川シーワールド
・バス(2時間)
入園券とバス乗車券をセットで買うと、通常料金と比べて合計で2,000円程度割安。バスの乗車券は東京駅の八重洲北口で販売されている。乗車場所は東京駅の八重洲南口。
詳しくは公式サイトへ
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