東山動植物園(名古屋) 丨 ミストで涼むペンギンたち

キングペンギンの正面と横顔

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夏の風物詩といえば、打ち水、風鈴、かき氷。今年はそれに、”ペンギンミスト”なんてものを追加してみては如何でしょう。ご興味のある方は、東山動植物園のペンギンプールまで。冷たいミストの噴射とともに、ほら、ペンギンたちが集まってきましたよ。

涼をとるペンギン

東山動植物園入口

東山動植物園のペンギンプールに到着したのは、14時を少し過ぎた頃だった。梅雨があけたばかりの名古屋は、じっとりとして蒸し暑い。夏の暑さが堪えるのは、ペンギンたちも同様だ。いくらプールがあるとはいえ、夏場は換羽中のペンギンたちが多く、羽が生え変わるまでの数週間は水に入ることができない。

「この暑さ、そうとうバテているのでは・・・。」と心配しながら、プールに近づいた。

お尻から換羽中のフンボルトペンギン

暑そうなフンボルトペンギン
暑そうなフンボルトペンギン

ペンギンは寒い地域にいる印象が強いが、フンボルトペンギンはそうではない。野生の個体は、ペルーや地理の海岸沿いなどの温暖な地域に生息している。暑さ対策として、くちばしの付け根あたりのピンク色に裸出した皮膚が、熱の放散に役立っているという。フンボルトペンギンは、東山動物園に暮らすペンギンの中で、最も暑さに強い種だと言えるだろう。

プールの内外に沢山の白い毛が散乱している。予想通りフンボルトペンギンたちの換羽が始まっているらしい。日陰になった岩場には、フンボルトペンギンのつがいが寝そべっている。今にも「あつい、あつい」という声が聞こえてきそうだ。

お尻から換羽中のフンボルトペンギン
お尻から換羽中のフンボルトペンギン

ペンギンたちは換羽をする際、くちばしを器用に使って抜けた毛を振り落とす。ペアがいるものはお互いを“羽づくろい”をして、順調に換羽が進むようにサポートする。
下の写真のペンギンは、換羽が始まったばかりらしい。両尻に2つの円形ハゲができているところからすると、自分のくちばしが届きやすいエリアから換羽は進行していくようだ。

ミストにあたるフンボルトペンギン
ミストにあたるフンボルトペンギン

突然「シャー」という音が聞こえたかと思うと、岩のあちこちが白いもやで覆われる。ペンギンたちの頭上から、ミストの散布が始まったのだ。ペンギンたちの動きが少し活発になる。ミストの直下には、先ほどまで溶けそうな顔で寝そべっていた2羽の姿があった。

孤高のキングペンギン

大きな羽をパタパタさせるキングペンギン
大きな羽をパタパタさせるキングペンギン

ペンギンエリアの中で最も目立つのは、体の大きなキングペンギン。1羽しか飼育されていない故に、その大きな姿はプール内で目立つ。野生のキングペンギンは、亜南極や南極域の比較的温暖な島々で暮らす。この日は、頭上を岩で覆われた日陰に入り込んで、しばらく眠っていた。

ミストの噴射音が目覚まし代わりになったのか、キングペンギンがふと顔をあげた。ミストの噴射がかかる位置に移動すると、羽根をパタパタと動かしている。水を得た魚ならぬ、水を得たキングペンギンは、涼しいミストのおかげで活力を取り戻したらしい。

キングペンギンの正面と横顔
キングペンギンの正面と横顔

活動的になったキングペンギンの正面に回り込んで、まじまじとその顔を見つめてみる。首周りの鮮やかな黄色、約13㎝はある長いクチバシ、切れ長の目、そのすべてが何時間でも見ていられるほどに美しいのだ。

クールな表情のイワトビペンギン

プール内を遊泳するイワトビペンギン
プール内を遊泳するイワトビペンギン

プールの水面下を泳ぐ2つの影の正体は、イワトビペンギン。野生のイワトビペンギンは、亜南極圏の島々やインド洋、南大西洋の温帯の島々に広く分布して生息する。ピョンピョンと飛ぶように移動することで良く知られているが、他のペンギン同様に、泳ぎも非常に得意とする。

キリッとした表情が素敵なイワトビペンギン
顔立ちがクールなイワトビペンギン

丁度ミストが噴射し始めた頃、遊泳を楽しんでいた2羽が陸にあがってきた。泳いでいるときよりも、目の上のとさかのような飾り羽が目立って格好いい。

それにしても、暑さ対策にミストとはなかなか粋な計らいをするものだ。「涼をとるペンギン」の姿が、名古屋の夏の風物詩して名を馳せる日も近いかもしれない。

シャバーニとゴリラ女子

シャバーニのお尻
シャバーニのお尻

最近女性の間で、にわかにゴリラブームが起こっているらしい。ゴリラに魅せられた女子たちを、通称「ゴリラ女子」と呼ぶそうだ。東山動植物園の”シャバーニ”は、ゴリラ女子界きっての人気もの。ニヒルな笑み、涼しげな横顔、物憂げな流し目、頼れるリーダー、イクメンパパ・・・女子たちが口にするシャバー二の特徴は、モテ要素意外何も見当たらないほど完璧である。

筋骨隆々のシャバーニ
筋骨隆々のシャバーニ

ただそこに居るだけで、何人も軽々しく寄せ付けないオーラがある。キュッと上がった口角に、強い目力。大人でさえ軽々しく持ち上げてしまいそうなほどに発達した腕、そして身体を支える尻の筋肉・・・。

不覚にも、ゴリラ女子への階段を一歩前進したようである。

動物たちのスキンシップ

頭をごっつんこするアジアゾウの親子
頭をごっつんこするアジアゾウの親子

東山動物園では、広大な敷地を生かして沢山の生き物を飼育している。同一種が群れで生活している姿を観察するのは、広い動物園ならではの楽しみだ。

見つめ合うアクシスジカ
見つめ合うアクシスジカ

2頭が見つめ合う瞬間に出くわす度、動物っていいなぁと感動する。その愛に満ちた眼差しに胸を打たれる。水族館・動物園めぐりの醍醐味は、このような出会に尽きるのだ。

 

Text:水鳥 るみ(フリーランスライター)

東山動植物園(名古屋)の基本情報

●東山動植物園のホームページ
http://www.higashiyama.city.nagoya.jp/

●東山動植物園のペンギンの種類
キングペンギン
フンボルトペンギン
イワトビペンギン(キタイワトビペンギン)

●東山動植物園の営業時間
9:00〜16:45
休館日:毎週月曜日
※月曜日が国民の祝日または振替休日の場合はその直後の休日でない日が休園日

●東山動植物園の入園料
大人:(高校生以上)2,000円
中学生以下:無料

●東山動植物園へのアクセス
〒464-0804 名古屋市千種区東山元町3-70

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