名古屋港水族館 (愛知)丨 南極のペンギンたち

      2017/04/14

いざ、日本の南極へ!ペンギンに会いにいこう

早朝からパラパラと小雨が振っている。不安定な天候が続くのは、季節が変わる前触れだ。もう幾日もすれば、30度を超す猛暑日がやってくるだろう。

日本に限らず、世界の各地域にその場所特有の四季がある。全体の98%が氷床に覆われた南極でさえ、季節は変化するのだ。

南極観測船ふじ

名古屋港の南極観測船ふじ

名古屋港に停泊する南極観測船ふじ

南極の夏、そう聞いてもいまいちピンとこないかもしれない。最も気温が上がるのは、12月下旬から2月にかけてで、日本と真逆のタイミングだ。夏の時期は気温が摂氏0度を上回る日が増え、本当に天候の良い日は10度くらいまで上昇するという。南極の夏は、日本の冬のイメージに近いかもしれない。

では、南極の冬はどんな様子なのだろう。残念なことにほとんどの人は、南極の冬を直に体感することはできない。南極には毎年3万人の旅行者が訪れるが、そのほとんどは10月〜2月、つまり南極の春夏シーズンにクルーズ船で上陸するからだ。

特別に訓練を受けた人間でなければ、生活するのが困難なほど南極の冬は厳しい。その厳しい冬を身をもって体験しているのが、南極観測隊の隊員たちだ。60名ほどで構成される隊員の内約半分は、最も厳しい冬の時期を南極で越す越冬隊員である。

南極への旅、荒れ狂う海を超えていく極地への旅は、いったいどのように行われているのだろうか。名古屋港に停泊する巨大な船の内部で、その一端を垣間みることができた。港でひときわ目を惹く鮮やかなオレンジの船。その名を「ふじ」という全長100mのこの船は、1965年から18年もの間、南極観測に貢献した。

南極観測船ふじの船内にある食堂

南極観測船ふじの船内にある食堂

当時の姿がそのまま残っている船内に一歩足を踏み入れれば、まるで自分が南極観測隊の隊員になったような気分だ。今にも熱々の料理が出てきそうな食堂や、船室で囲碁に興じる若者たち。クルクルと回転する床屋の看板が掲げられた扉の奥には、髪を切ってさっぱりとした隊員の姿がある。非日常の中の日常が、陸から遠く離れた場所で暮らす隊員の心を慰めるのだろう。

無事に南極大陸に到着した隊員たちは、それぞれの任務に付く。自分の他に代わりのいない大切な任務だ。必要に迫られれば、ブリザードが吹き荒れる嵐の中でさえ、彼らは作業を行う。

そしてこんな極地にも、生き物は生息する。吹雪や寒さに耐える知恵をつけ、繁殖を続ける強者たちが存在するのだ。そんな越冬のプロ集団を間近で見られる場所が、この名古屋港にある。

名古屋港水族館のペンギン4種

気温−2℃、水温−6℃の巨大プール。所狭しとペンギンたちが泳いでいる。

水温−6℃の巨大プール。所狭しとペンギンたちが泳ぐ。

「アー、アー、アー」と鳴く声が聞こえる。氷点下の世界。南極の日照データを参考にコントロールされている明かりが、館内をほの暗く照らす。この小さな南極は、名古屋港水族館の中にある。

名古屋港水族館は、南極観測船ふじが停泊する場所の目と鼻の先に建つ。この水族館では、日本では2カ所でしか見る事の出来ない皇帝ペンギンをはじめ、南極周辺を故郷に持つ沢山のペンギンが暮らしている。

コウテイペンギン

水中を泳ぐ名古屋港水族館の皇帝ペンギン

水中を泳ぐ名古屋港水族館の皇帝ペンギン

名古屋港水族館の皇帝ペンギン。体の割に顔が小さい。

体の割に顔が小さい皇帝ペンギン。

名古屋港水族館の皇帝ペンギン。ヒゲペンギンと井戸端会議。

ヒゲペンギンと井戸端会議

ペンギン全18種類のうち、最も身体が大きいのがコウテイペンギン。南極の過酷な冬に耐えながら子育てをする。

体はずんぐりと大きく、沢山の毛で覆われている。体の割に羽根やくちばしが短いのは、マイナス60度にもなる外気に触れる部分を短くし、熱を逃がさないようにするためだ。その身体は、過酷な南極を生き抜くために最適な構造になっている。泳ぎは悠々として美しく、全身を覆う羽根が見事に水を弾く。

ヒゲペンギン

プカプカと浮かぶヒゲペンギン

プカプカと浮かぶ名古屋港水族館のヒゲペンギン

名古屋港水族館のヒゲペンギン

空を仰ぎ見るヒゲペンギン

人間に興味津津のご様子。寄り添って見つめてくる姿がたまらない。

水槽越しに寄り添う3羽のヒゲペンギン

白黒の顔に特徴的なアゴのラインと、赤茶色のクリっとした目が印象的なヒゲペンギン。英語では、「チン・ストラップ=あごひげ」と呼ばれる。南極大陸で初めて発見された種であることから、南極ペンギンと呼ばれることもある。

見た目の可愛らしさとは裏腹に、気性は少々荒っぽい。水槽の中では、アデリーペンギンやジェンツーペンギンと喧嘩している様子が観察できた。

アデリーペンギン

気持ちよさそうに泳ぐ名古屋港水族館のアデリーペンギン

気持ちよさそうに泳ぐ名古屋港水族館のアデリーペンギン

名古屋港水族館のアデリーペンギン。岩場でちょっとひと休み。

岩場でひと休みするアデリーペンギン

首を伸ばすと…、ひょっとこみたい。

首を伸ばすと…ひょっとこみたい

白い輪で縁取られた目が特徴的なアデリーペンギン

スイカのペンギンなど、キャラクターのモチーフに数多く利用されている。水や空気から受ける抵抗をできるだけ少なくするため、流線型になって泳ぐ様子が可愛い。

ジェンツーペンギン

ガラス越しに動くものを追いかける名古屋港水族館のジェンツーペンギン

ガラス越しに戯れてくる名古屋港水族館のジェンツーペンギン

横顔が美しい名古屋港水族館のジェンツーペンギン

横顔が美しいジェンツーペンギン

気泡をなびかせながら泳ぐジェンツーペンギン。

気泡をなびかせながら泳ぐジェンツーペンギン

最も泳ぎの速い鳥として知られるジェンツーペンギン。急旋回や急浮上はお手のもので、水上へ軽々とジャンプする姿は見事だ。

くちばしの大部分と足は、赤みの強いオレンジ色で美しい。好奇心旺盛な彼らは、水槽越しに動くものを見つけると、くちばしでつかもうと近寄ってくる。

北極の海に暮らす生き物

愛らしいベルーガ

 

水からひょっこり顔を出すベルーガ

水からひょっこり顔を出すベルーガ

南極の最低気温がマイナス80度になる一方、北極の最低気温はマイナス37度前後に留まる。いずれにせよ厳しい寒さに違いないが、南極とは違った生態系を持つ。

北極周辺で暮らすのは、シロクマ(ホッキョクグマ)をはじめ、セイウチやベルーガ(シロイルカ)、ホッキョククジラ、イッカクなど、南極の生物に比べ大型の種が多い。

ボールを器用に操るベルーガ

ボールを器用に操るベルーガ

北極で暮らす生物の中で、特に人気なのがベルーガだ。つるつるとした真っ白な身体に、微笑んでいるような口元、優しい目。口から水の輪っかを出してくれることもあるそうだが、残念ながら今回は見られなかった。

口から勢い良く水を飛ばすベルーガ

口から勢い良く水を飛ばすベルーガ

2004年に国内で初めてベルーガの出産に成功した名古屋高水族館では、ベルーガの家族を見ることができる。最も大きなオスのベルーガ「ホドイ」は、体長3.75m/体重720kgにもなる。
ベルーガたちの公開トレーニングも是非見て頂きたい。口から噴水のように水を飛ばしたり、頭でボールを運んだり、可愛らしい仕草が盛りだくさんだ。

仲良しシャチの親子

名古屋港水族館のシャチトレーニング風景

名古屋港水族館のシャチトレーニング風景

黒い巨体が飛び出したかと思うと、ザバァという水音とともに水しぶきがあがる。一般的に冷水を好むシャチだが、その生息域は広く、南極や北極の海のほか世界各地で目撃されている。ここ日本でも、北海道などで度々目撃されているという。

彼らに自然界の敵は存在しない。その類いまれなる知性の高さを武器に、彼らは群れで協力して狩りをする。イカやペンギン、大きなものではアザラシやイルカ、ホッキョクグマ、クジラ、サメまでも、その餌食になるというから驚きだ。

シャチの口の中はきれいなピンク色をしている。

キレイなピンク色の口の中に、歯がぎっしり

トレーニングを積んだ名古屋港水族館のシャチは、トレーナーと接近しても問題はおこらない。ただし、自然界で彼らに出会ってしまったら最後、この頑丈な口に挟まれては生き延びるのは難しいだろう。

 

Text:水鳥 るみ(フリーランスライター)

名古屋港水族館(愛知)の基本情報

●名古屋港水族館のホームページ
http://www.nagoyaaqua.jp/

●名古屋港水族館のペンギンの種類
コウテイペンギン(別名:皇帝ペンギン・エンペラーペンギン)
ヒゲペンギン(別名:アゴヒゲペンギン)
アデリーペンギン
ジェンツーペンギン

●名古屋港水族館の営業時間
<名古屋港水族館>
通常:9:30~17:30
GW・夏休み:9:30~20:00
冬季:9:30~17:00
休館日:毎週月曜日 ※祝日の場合は翌日

<南極観測船ふじ>
9:30〜17:00

詳細は公式サイトへ

●名古屋港水族館の料金
大人・高校生:2,000円
小中学生:1,000円
幼児(4歳以上):500円
※夜間割引あり

詳細は公式サイトへ

●名古屋港水族館のお土産・グッズ
右)ジェンツーペンギンのマグネット。羽と足の繋ぎ目がバネになって揺れる。
左)温度計つきコウテイペンギンのマグネット

名古屋港水族館でおみやげに購入したペンギンの磁石。

名古屋港水族館でおみやげに購入したペンギンマグネット。

●名古屋港水族館へのアクセス
〒455-0033
愛知県名古屋市港区港町1−3

 - ペンギン水族館 , , ,

        

スポンサーリンク

スポンサーリンク

  関連記事

岩のてっぺんから地上を見下ろすイワトビペンギン
京急油壺マリンパーク(神奈川県三浦市) 丨 イワトビペンギンとのふれあいイベント

神奈川県にある水族館「京急油壺マリンパーク」には、ロックシンガーのDAIGOさんが育てた”ペンペン”をはじめ38羽のイワトビペンギンが暮らす。握手(羽)や写真撮影、それにお触りOKのイベントに参加して、イワトビペンギンとの触れ合いを存分に楽しもう。

海遊館で抱卵中のイワトビペンギン
海遊館(大阪府)|卵を守るイワトビペンギン

エントランスビルの4階、フォークランド諸島のコーナーで、イワトビペンギンが繁殖シーズンを迎えている。普段以上にキリリと勇ましい顔つきで、ペンギンはじっと前を向いて動かない。足の間に守るべき宝物があるからだ。

フンボルトペンギンと一緒にハイチーズ!
下田海中水族館(静岡・伊豆)丨湾に暮らすペンギンたち

下田海中水族館は、U字型の湾の形状を巧みに生かした自然一体型の水族館。お魚をあげたり、一緒に写真を撮ったり、ペンギンとの思い出を作りに出かけよう。

八景島シーパラダイスのジェンツーペンギン
横浜・八景島シーパラダイス|7種のペンギンと出会える水族館

「横浜・八景島シーパラダイス」で飼育されているペンギンは7種類!ふれあいコーナーやパフォーマンスショーも充実し、水族館と遊園地が一度に楽しめる夢のようなスポットだ。

人懐っこいペンギンの「しちじょう」
京都水族館|さぁさぁお立ち会い!ペンギンのご飯が始まるよ

京都水族館にいる72羽のケープペンギンをご紹介。餌を奪い奪われ、フリッパーをバタつかせて大騒ぎするペンギンたちのお食事タイムを見てみよう!

鳥羽水族館のペンギン写真
鳥羽水族館(三重県)|ペンギン散歩を間近で見よう!

日本で唯一「ジュゴン」の飼育がされていることで有名な「鳥羽水族館」。その飼育数は日本一の1200種を誇る。フンボルトペンギンたちが暮すのは、ガラス張りの大プールが設置された水の回廊。沢山のペンギンたちが、プールの縁で羽をパタパタさせて来園者を出迎える。

ジェンツーペンギンとにらめっこ/うみの杜水族館
仙台うみの杜水族館(宮城県)|ジェンツーペンギンとにらめっこ!

仙台うみの杜水族館で暮すペンギンは、8種類と非常に多い。水槽に近づくと、ジェンツーペンギンが走り寄ってきた。水槽の奥では、キングペンギンの成鳥に混ざって茶色いヒナの姿が見える。

水族館の画像
【全まとめ】ペンギンに出会える水族館 | 日本

ペンギンと出会える日本の全ての水族館についてまとめています。一部、動物園についてもご紹介します。

フンボルトペンギンの餌やり
あわしまマリンパーク(静岡県)|無人島のペンギン

桜が満開を過ぎた頃、静岡県の沼津市にある淡島にやってきた。無人島の水族館にペンギンがいると聞いて、会いに行かずにいられようか。

しながわ水族館のイルカコーナーのプロジェクションマッピング
しながわ水族館(東京)|ペンギンランドとイルカショーが必見

京急線の大森海岸駅近くにある「しながわ水族館」。元気いっぱいのマゼランペンギンやイルカやサメなど、沢山の生き物達が暮らしている。知名度はややマイナーだが、都内でじっくり生き物を観察したい人にとっては、穴場の水族館である。