下田湾を見下ろすペンギンプール

下田の入り江に暮らすペンギンたちの話をしよう。
下田海中水族館は、U字型の湾の形状を巧みに生かした自然一体型の水族館だ。水族館へは、湾を縦断する桟橋を歩いて渡る。桟橋のちょうど中央付近には、「アクアドームペリー号」の名を持つ円形の船が浮かんでいる。もちろんここも水族館の一部であり、中には下田近郊の豊かな海が再現されている。
桟橋から湾を見渡すと、気持ち良さそうに泳ぐイルカの群れを発見する。あるものは人と泳ぎ、あるものはボートと並走するように泳ぐ。ペンギンプールは桟橋の突き当たりにある。この場所で暮らすのは、フンボルトペンギンとキングペンギンの2種である。
フンボルトペンギンの空中ウォーキング

巣箱で思い思いの時を過ごしていたフンボルトペンギンたちが、飼育員の周りに集まりだした。ペンギンプールの周りには、人だかりができる。ペンギンも観客も、お食事が始まるのを楽しみに待っている。

プールの周りをぐるりと取り囲んでいるのは、ガラスでできたペンギン専用の遊歩道だ。飼育員は餌をちらつかせながら、ペンギンたちを通路へと誘導する。目の前を通り過ぎるのは一瞬だが、それでもかなりペンギンに接近できる。通路の下に回り込んで、頭上のガラス越しにペンギンが歩く様子を観察するのも楽しい。
フンボルトペンギンと写真撮影

続いてご紹介するのは、フンボルトペンギンと記念撮影ができるコーナー。この日は、5羽のペンギンと写真を撮ることができた。背景には、湾の青と空の青。出来上がった写真には満面の笑みを浮かべた人間と、つんとすましたペンギンの姿があった。
フンボルトペンギンへのエサやり体験

フンボルトペンギンへの餌やり体験は、ペンギンに接近できる人気のイベントだ。魚をその手に携えて、ペンギンからの熱い視線を独り占めしよう。
トングで魚をつかむと、ペンギンたちが一斉に首を伸ばす。魚をめぐって小競り合いが始まる前に、1羽のペンギンに狙いを定めてトングをおろす。くちばしにさらわれた魚は、瞬く間に視界から姿を消す。ペンギンは餌を頭から丸呑みするのだ。歯を持たないペンギンは、舌と上顎にあるトゲトゲで餌を口の奥に押しやっている。餌やりをしながら、その不思議な生態をじっくり観察してみよう。
フンボルトペンギンのお散歩

日が陰ると、ペンギンたちはプール周辺の道路をお散歩する。水の中では“飛ぶように”泳ぐペンギンも、陸上ではどこか頼りなくゆっくりとした足取りだ。2足歩行で歩くその姿は、歩き始めたばかりの人間の赤ちゃんに似ている。
飼育員は、集団からはぐれそうになるペンギンの背中をデッキブラシの先でトンと押す。ペタペタ、ペタペタとお揃いの足音を響かせて、ペンギンたちはプールへと戻っていった。
キングペンギンの暮らしぶり

4羽のキングペンギンたちの紹介へと移ろう。野生のキングペンギンは亜南極と呼ばれる地域で暮らしている。フンボルトペンギンと比べると暑さに弱く、気温が高い時は専用の小屋で過ごしているようだ。小屋はガラス張りになっていて、内部の様子をよく見る事ができる。

午後の遅い時間、日がすこし陰ってきた頃にキングペンギンたちがプールに出てきた。3羽はプールをめがけて、小走りにかけていく。残りの1羽は、プールに目もくれずどこか遠くを見つめている。羽が生え変わる換羽がまだ終わっていないらしい。身体はすっかりきれいなのに、頭だけモコモコとした毛が残っている。1羽だけプールサイドに残されたその姿は、どことなく寂しげに見えた。

18種類のペンギンのうち2番目に身体の大きいキングペンギンは、その泳ぎも堂々としている。尾羽まで届く長さのフリッパーをひとかきして、ぐんぐんと前に進んでいく。プールの水は澄んでいて、キングペンギンの動きが良くわかる。水中で泳ぐ様子を目線の高さで観察できるのも、このプールならではの魅力と言えそうだ。
Text:水鳥 るみ(フリーランスライター)
下田海中水族館(静岡県)の基本情報
●下田海中水族館の公式ホームページ
http://shimoda-aquarium.com
●下田海中水族館のペンギンの種類
キングペンギン
フンボルトペンギン
●下田海中水族館の入場料
Web限定プラン(割引あり) 公式サイトへ
大人:2,000円→1,800円
小人:1,000円→900円
65歳以上:1,700円
●下田海中水族館の開館時間
9:00~16:30
時期によって変更があります。
詳しくは公式サイトへ
●下田海中水族館のアクセス
〒415-8502
静岡県下田市3-22-31