埼玉県こども動物自然公園丨 世界最大のフンボルトペンギン生態園
2016/10/20
目次
ペンギンたちの楽園“ペンギンヒルズ”
昨夜から降り続く雨が上がり、木々の隙間から太陽の光が差し込んできた。土の匂いが立ち込める斜面に、小ぶりの紫陽花が列をなして咲いている。あまりの綺麗さに歩くスピードを落としかけたが、やはり先を急ぐことにした。この長い長い坂道の向こうに、夢にまで見た「ヒルズ」がある。
私は今「埼玉県こども動物自然公園」というペンギン好きの間で話題のスポットにきている。そこでは、ペンギンたちと来園者を仕切る柵やネットなどがほとんど無いという。日本でも類を見ないペンギンの生態園「ペンギンヒルズ」について、詳しくご紹介しよう。
フンボルトペンギンの生息地を再現
野生のフンボルトペンギンは、主に南米のペルーからチリにかけて繁殖している。日本では水族館や動物園などでよく見るフンボルトペンギンだが、野生の個体はレッドリストに登録された絶滅危惧種である。
「ペンギンヒルズ−フンボルトペンギン生態園」は、野生の繁殖地であるチリのチロエ島プルニウィル保護区の景観を真似て作られた。生態園という名の通り、その広大な敷地でペンギンのライフスタイルをつぶさに観察できる。
お散歩中のペンギンたち
「ペンギンヒルズ」は、フンボルトペンギンの巣営地になってる緑の丘と、大きな波の立つプールの2つのエリアから成っている。丘のふもとからプールへと至る通路は、来園者が自由に行き来できる。一方で、巣箱が設置されている丘の斜面については、ペンギン以外立ち入ることができない。毎年、沢山のペンギンのヒナが巣箱で誕生しているのは、ペンギンたちへの細やかな配慮の賜物なのだ。
12時半頃にヒルズに到着すると、数羽のペンギンたちが管理棟の脇をお散歩している。隊長のようなペンギンを先頭に、等間隔で一列に並ぶペンギンたち。その可愛い姿に写真を撮るのも忘れ、しばし呆然としていた。
フンボルトペンギンは比較的臆病な性格と聞くが、ここのペンギンは大きな音を立てたり急に動いたりしない限り、人を怖がる様子はない。ペンギンを前に立ち尽くす私のすぐ脇を、1羽のペンギンがスイっと通過していく。うっかりしているとペンギンたちの通行の邪魔になってしまう。ペンギンたちが寄ってきた時は、彼らに道を譲るのが「ペンギンヒルズ」でのマナー。飼育員さんに「ペンギンに道をあけてくださ~い」と注意されてしまうので気をつけよう。
感動の餌やり体験
「ペンギンヒルズ」のイベントの1つに、フンボルトペンギンへの餌やり体験がある。過去に東武動物公園をはじめ様々な場所で餌やりをした筆者が断言するに、これほどペンギンを間近に観察できる機会はない。
「ペンギンヒルズ」では毎日2回、餌やりが実施される。希望者は、300円の参加費と引き替えにアジを3匹手にすることができる。餌やり体験の人気は高く、休日は参加待ちの長い列ができるほどだ。各回先着30名までと制限があるので、どうしても餌やりをしたい方は、早めに列に並ぶことをお勧めする。
並んだ順に整理券が配られて、餌をあげる順番が回ってきた。魚を手にした次の瞬間、私はペンギンたちの眼差しを一心に受けることとなる。お目当てのペンギンを決めて魚を渡そうとするも、なかなかうまくいかない。血気盛んなペンギンたちが、我先にと獲物を狙っているのだ。
やっとの思いで、1羽のペンギンの目の前に魚をぶらさげる。すかさず別のくちばしが横から割り込み、魚は見事に真っ二つになった。獲物を獲得したペンギンは、他のペンギンに取られまいと、ものすごいスピードで群れから飛び出していく。「御用だ、御用だ!」と言わんばかりに、別のペンギンがそれを追いかける。ペンギンたちの可愛らしい追いかけっこは、餌やりの間中、ひっきりなしに続いていた。
一般参加型の餌やりの後は、飼育員による餌やりの時間だ。食べ損ねるペンギンがいないように、1羽1羽名前を呼んで確実に餌を渡していく。
全ての餌を与え終わった飼育員は、拍手をするよう来園者に求める。促されるままに皆が手を叩くと、餌の終了を察知したペンギンたちは、一斉にプールの方へ歩いて行った。大盛況の餌やりイベントは、こうして幕を閉じた。
連続イルカ跳びウォチング
お腹がいっぱいになったペンギンたちが、プールの周りにたむろしている。広々としたプールの水は青く透き通り、至るところから霧状のシャワーが吹き出ている。ソーラーパネルを動力として人工の波が作り出され、ペンギンたちは波の間を自由に泳ぎまわる。
泳いでいるペンギンが、だんだんスピードに乗り始める。と、次の瞬間。
「ピョン、ピョーン」
水切りに使う平たい小石のように、ペンギンが水面から何度も跳び上がる。これは、通称「イルカ跳び」と呼ばれる泳ぎ方だ。
元気有り余るペンギンもいれば、ちょっぴりやる気のないペンギンもいる。下記の動画のペンギンは、羽も足も首もだらんとさせて、ただただ波に身を任せている。その姿は、行雲流水というべきか、どことなく達観しているようにも見えた。
ユーカリの木でお休みするコアラたち
ペンギンヒルズの次に向かったのは、コアラたちが暮らす場所。「埼玉県こども動物自然公園」は、日本で初めてコアラを飼育した歴史ある場所だ。今現在も、コアラを飼育している日本の動物園は、10箇所程度とあまり多くない。
このコアラ舎は、ペンギンヒルズと同じ2014年にリフォームされた。窓を二重構造にし、壁や屋根の断熱をすることで、コアラたちの暮らしやすさを追求したエコ設計だ。施設内には数々の木が立ち並び、木々の間にはユーカリの葉が置かれている。ユーカリの葉のそばで、コアラたちは一心不乱に葉っぱを食べたり、うとうと眠ったりしている。
高い木の枝に登って遊んでいるコアラの子供が、突然おしりを小さくふったかと思うと、隣の木まで華麗にジャンプした。ここまで近距離でコアラを観察したのは初めてだ。コアラ舎を出る頃には、まるでオーストラリアを旅行したかのような満足感で胸が一杯になった。
マッチョなイケメンカンガルーと、ワラビーの親子
数え切れないほど沢山のカンガルーが、カンガルー舎に暮らしている。雄と雌とで少しエリアを分けているようで、オスと思われる大きいカンガルーが一カ所に集められている。下の写真はその中の1匹で、立ち上がると人間の女性くらいの背丈がある。見事なまでに鍛えられた胸筋が、強い漢を感じさせる。
仕切りのないスペースには、お母さんカンガルーと子どものカンガルーがのんびり暮らしている。寝そべっているポーズは、どことなくセクシーで美しい。
ワラビーの住処へと移動すると、お母さんのお腹のポケットから顔を出すワラビーの子供を発見した。お母さんがジャンプする度に、ポケットの中でゆさゆさ揺れている。もう結構な大きさのはずなのに、お母さんにべったりと甘えている様子がなんとも可愛い。
「埼玉県こども動物自然公園」では、動物の子供たちの姿を至る所で目にすることができる。それは非常に楽しい体験だった。
ここはサバンナ!?キリンの群れとの遭遇
最後に可愛いキリンの親子をご紹介して、「埼玉こども動物自然公園」の動物紹介を終えたいと思う。
5~6頭のキリンが群れをなして移動している姿は、さながらサバンナでのワンシーンのようだ。中でも驚いたのは、キリンの走る姿。長い足をしなやかに曲げて、颯爽と目の前を走り抜ける。
色々な動物たちを目と鼻の先で観察できる「埼玉県こども動物自然公園」。広すぎて周り切れなかった場所も多いが、それは次のお楽しみにとっておくこととしよう。
埼玉県こども動物自然公園の基本情報
●埼玉県こども動物自然公園のホームページ
http://www.parks.or.jp/sczoo/index.html
●埼玉県こども動物自然公園のペンギンの種類
フンボルトペンギン
●埼玉県こども動物自然公園の営業時間
9:30〜17:00
※11/15〜2/10は9:30〜16:30
詳細は公式サイトへ
●埼玉県こども動物自然公園の入園料
大人(高校生以上):510円
小中学生:210円
●埼玉県こども動物自然公園へのアクセス
〒355-0065 埼玉県東松山市岩殿554
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