皇帝ペンギン(エンペラー・コウテイ)【特徴・生態】
2015/03/16
目次
皇帝ペンギンの特徴
皇帝ペンギンは、ペンギン全種の中で1番大型です。なんと、最大130cmまで成長します。
地球上でもっとも過酷な南極大陸の冷環境に適応し、見事に子育てを果たす姿はドキュメンタリーでよく見かけるものです。
皇帝ペンギンは、1回の繁殖に1個の卵だけ産みます。母から卵を受け取った父ペンギンは、5分も放置すれば卵が凍ってしまうような寒さの中、時折のブリザードにも耐えながら、3週間以上も絶食した状態で、卵をお腹と足の間に抱卵しつづけます。母ペンギンが繁殖地からずっと遠くの海辺で子供のための餌を捕まえて戻ってくるまで。
皇帝ペンギンは、いくたの困難の中でも生き抜き、ヒナを育てて命を次に繋げようとする、力強さを感じさせてくれるペンギンなのです。
皇帝ペンギンの写真
皇帝ペンギンの生態
基本情報
【英名】Emperor Penguin (エンペラーペンギン)
【学名】Aptenodytes forsteri
・種小名フォルステリ( forsteri )は、キャプテン・クックに同行したJ.R.フォースターにちなんで命名された。
【分布】南極大陸
【体長】100cm~130cm
【潜水能力】
【餌】魚類、イカ、オキアミなど
【繁殖行動】4月から6月にかけて、卵の数1
【最初の繁殖】少なくとも4歳になるまで繁殖しない
【寿命】20年かそれ以上と考えられている
【天敵】ヒョウアザラシ、シャチ
生息地
皇帝ペンギンは南極大陸と大陸沿岸の島々のみで繁殖する。繁殖地は海から内陸部に100km以上も移動した先にある。繁殖地に3月から12月まで留まり、わずか三ヶ月だけコロニー(繁殖地)を空にする。
南極大陸で生息するペンギン種
皇帝ペンギン、アデリーペンギン、ヒゲペンギン、ジェンツーペンギンの4種が南極大陸で生息している。この中で、皇帝ペンギンとともに南極大陸で繁殖し赤ちゃんを育てられるのは「アデリーペンギン」の2種だけなのだ。
外観
体つき
ペンギン全種の中でもっとも大型。体つきは頑丈。体と足の大きさに比べて、頭部が小さく見える。
羽毛
羽毛は厚い皮下脂肪の上に非常に高密度で生えそろっている。脚の裏にも羽毛が生えている。足の上に卵やヒナをのせて寒さから守る役割を果たす。
抱卵斑と抱卵嚢
下腹部にある羽毛が抜け落ちて現れた皮膚の露出部は、たくさんの毛細血管で暖かくなっている。その皮膚の部分を「抱卵斑」という。卵と密着する抱卵斑を中心に、卵を包む、だぶついた羽毛全体を「抱卵嚢」という。
尾羽
立ちながら、休息をとったり、卵をじっと抱えているときは、頑丈は尾羽に寄りかかってバランスをとっている。ちなみに、皇帝ペンギンは抱卵期に立ちながら寝る。
抱卵
オスが卵をクチバシでかき寄せて自分の足の上に置き、腹部のだぶついた抱卵嚢で覆う。そして、かかとに体重をかけて立つことにより、つま先を氷の面から浮かせるようにする。
フリッパーの長さ
36.8 cm オス | 35.5 cm メス
くちばしの長さ
8.2 cm オス | 8.1 cm メス
体重
24.7〜36.7kg
[繁殖地への帰還時] 36.7 kg オス | 28.4 kg メス
[産後] 24.7 kg オス | 32 kg メス
ヒナ(赤ちゃん)
ひなは、灰色でふさふさした羽毛で全体が覆われている。
習性と行動
皇帝ペンギンは、ブリザードで−60度にもなる極寒の環境下にうまく適用し、仲間と協力しながら生き抜く習性を身につけている。
移動とナビゲーション
餌取り場の海から繁殖地の内陸部まで100km以上も行進する。ペンギンたちが行列を成して移動するのだ。太陽の位置から、繁殖地がある方法を判断しているらしい。太陽が出ない曇には間違った方向に移動してしまうことも。
トボガン
氷や雪の上を腹滑りして移動する移動方法を「トボガン」という。足で蹴って前に進む。トボガンの方が歩くよりも早く移動できる。
泳ぎと潜水
えさ場まで150-1,000kmも海上を移動する。水深400-450mの深海まで潜ることも可能。
ハドルの形成
繁殖期の南極大陸の環境は、一日中太陽が昇らない「夜」、気温マイナス60度近く、秒速50mに達する猛烈なブリザードが襲う。皇帝ペンギンたちは、群れてハドル(集団)を形成し、集団で暖めあう習性がある。1平方メートルあたり10羽にもなる。
他のペンギン種では、ハドルの形成は見られない。
ブリザードの風上側の個体は、風下側に形成された最も暖かな中心部分に、外側をまわって潜り込もうとする。
換羽
1月か2月に、定着氷や南極大陸の海岸で立ったまま、ひと月かけて換羽する。
換羽後、体力が回復すると、再び繁殖コロニーに移動し、次の繁殖に入る。
繁殖
・(繁殖期)1月〜3月の夏を海上で過ごす。海が凍り始めた3月〜4月にコロニーに戻る。
200km離れたコロニーまで長い行列をつくって歩行しつづける。繁殖コロニーは、南極大陸の周囲にできる定着氷、または簡単に近づける氷河の上の固い積雪の上に形成される。
・(産卵期)3月〜6月の初めに、大きな卵を一つだけ産む。
互いに鳴きあったり、頭を胸まで下げたりといった求愛行動により、ツガイを見つける。ツガイの絆はきわめて弱い。
・(抱卵期)産後。9週間。
産後、メスは、足をクチバシをうまく使ってオスに卵を受け渡し、生まれて来るヒナの餌を取り(採餌)に海に向かう。卵の受け渡しに失敗する危険がある。一方、オスは孵化まで、絶食状態で抱卵し続ける。
成鳥は連帯感が強く、特に抱卵中に、巨大なコロニーを形成する。巣やテリトリーをもたない。
9週間の抱卵後、7月に卵が孵化する。
・(育雛期)孵化後。
メスが孵化までに帰還しなかったら、オスは、ほんの僅かだが体内の脂肪をミルク状の液体(ペンギンミルク)を作り出して、足の上で暖めながらヒナに給餌する[1]。
そして、115-125日間もの絶食に耐え、帰還したメスにヒナを預け、交代でオスが採餌しに海に行くことになる。非常にお腹が減っていて、弱っている状態で、合計6ヶ月もの期間を絶食すること異なる。海で採餌を終えたオスは再びコロニーを目指して移動する。
その後の2ヶ月間、オスとメスが交互に採餌と育児をする。つまり、片方が海に餌を取りに行っている間、もう片方がヒナの世話をする。
ヒナの受け渡しには、ヒナの生存確率を大きく左右する危険がある。ヒナが氷の上に落ちると、ヒナはただちに凍死するかヒナ盗みにある。また、メスの帰還が間に合わない時には、オスはヒナを放棄してしまうこともある。
・(クレイシ期)
ヒナが十分に大きくなると、両親たちは一緒に食べ物をとりため海に行く。両親たちが行っている間、残されたヒナたちは、互いに群れて集団(クレイシ)を形成し身を守る。さらに、ハドルを形成することで暖かさを保つ。他のペンギンのヒナでは、ハドルの形成は見られない。給餌は12月まで続く。
・(巣立ち)孵化後150日。12月〜1月頃。
生後9週間くらいになると、ヒナは換羽し始める。古い羽毛は抜け落ち、新しい防水性の大人の羽毛が生えてくる。海に餌を取りに行く準備が整う。ヒナたちは自力で生きていけるようになる。
孵化後150日たった12〜1月初めに、ヒナたちは海へと旅立つ。
生息状況
・準絶滅危惧種 (2014年 レッドリスト)
・推定個体数 約40~45万羽 (from 国立極地研究所)
・個体数 60万羽 個体 (2012年 衛生画像解析 from ロイター)
皇帝ペンギンの関連動画
皇帝ペンギンと出会える水族館
アドベンチャーワールド(和歌山県)
名古屋港水族館(愛知)
皇帝ペンギンに似ているペンギンたち
参考文献・ペンギンサイト
[1] PENGUINWORLD : http://www.penguinworld.com/types/emperor.html
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