海遊館(大阪府)|卵を守るイワトビペンギン

   

海遊館の外観写真

5月初旬、快晴。
青一色の空に、こいのぼりが泳いでいる。

青空に舞うぺんぎんのぼり
いや、よくよく見てみると、泳いでいるのは鯉ではない。ジンベイザメに、アシカ、イルカ、エイ・・・それにペンギンもいるではないか!

子どもの健やかな成長を願って、私たちは古くから鯉を空に泳がせた。無論、子を思う気持ちは人間だけのものではない。哺乳類も、鳥も、魚も、生き物はみな知恵を絞り、自分の子孫を守り抜こうとする。
海遊館に泳ぐたくさんの「のぼり」は、そこで暮らす生き物と飼育員さんたちの「願い」のように思えた。

南極周辺のペンギンたち

抱卵期のイワトビペンギン

海遊館で抱卵中のイワトビペンギン

あるいは「願い」の叶う日も案外近いかもしれない。
エントランスビルの4階、フォークランド諸島のコーナーでは、ミナミイワトビペンギンが抱卵期を迎えている。有精卵であれば、32日〜34日ほどで可愛らしいヒナが誕生するはずだ。

「新体感エリア」と名付けられたこのコーナーは、天井がオープン型になっているため、来場者はペンギンの仕草や鳴き声(もちろん臭いも!)をリアルに体感できる。

威嚇するイワトビペンギン
巣への執着心が強いイワトビペンギンは、抱卵期ともなると、より厳重に辺りを警戒する。少しでも巣に近づこうとする気配を感じれば、ご覧の通り攻撃も辞さない。

羽繕いをするイワトビペンギンのつがい
夫婦同士の絆は比較的強く、求愛の際はオスが恍惚のディスプレーをする。頭を上下左右に振り、震えるような雄叫びをあげる。メスはそれに答えて鳴き、お辞儀をし、お互いに羽づくろいを繰り返す。羽づくろいは抱卵期の間も続けられるようだ。

ミナミイワトビペンギンのヒナ

昨年、海遊館では3羽のイワトビペンギンのヒナが誕生したという。そのうちの1羽は、世界初の人工授精で生まれたヒナだ。
フォークランド諸島に生息する野生の個体は、絶滅危惧種に指定されている。日本のこのような研究が海を超え、野生のペンギンの保護に繋がることを期待したい。

ヒナと成鳥を見分けるには、飾り羽に注目するとよい。ヒナの黄色い冠羽は生えたばかりで短く、くちばしもまだ黒っぽい。キリッと強面の成鳥と比べ、その表情にはあどけなさ残る。

飼育員さんからお魚をもらうイワトビペンギンのつがい

抱卵期の餌やりは、普段以上の気配りが必要だ。抱卵中のカップルを驚かさないように、飼育員さんたちは慎重にペンギンの巣を訪問する。
最初は警戒していたつがいも、相手がお魚を持っているとわかれば安心だ。ゴクン、ゴクンと勢いよく餌を飲み込んでいる。

餌をもらうために首を長く伸ばすイワトビペンギン

普段は猫背気味の背中も、お魚を前にすればピーンと伸びるから不思議である。
野生のイワトビペンギンは、身体の伸縮性と足の筋肉を頼りに、断崖絶壁の巣と漁場を何度も往復する。全てはより安全な場所でヒナを育てるため、彼らはその名の通り「岩を跳ぶ」のである。

氷のシャワーを浴びながら

海遊館の南極水槽

より大型のペンギンに会うため、エントランスビルの3階から海遊館の8階へ、エレベーターで一気に移動する。屋外エリアの8階を除き、海遊館の7階から4階までは全てスロープで繋がっていて、来場者は館内を螺旋状に下りながら生き物を観察する。

頭に雪が積もったキングペンギン
7階には「南極大陸」の水槽がある。そこは、キングペンギンアデリーペンギンジェンツーペンギンの住処である。

屋外は快晴のはずだが、ペンギンたちの頭にはわずかに雪が積もっている。「南極大陸」の水槽では、頭上の一部から雪が降り注ぎ、雪の落下地点はペンギンたちのたまり場になっている。

換羽中のキングペンギン

集団の中でひと際目立つのは、換羽中のペンギンたち。古い羽の部分がモコモコと盛り上がり、まるでダウンを羽織っているかのようだ。
くちばしの届く範囲は換羽もスムーズだが、顔やお尻の毛はなかなか抜け落ちない。衣替えの億劫さは、どうやら人間の比ではなさそうだ。

小石を運ぶアデリーペンギン
大勢のキングペンギンたちの前を、2羽のアデリーペンギンが通過した。口に小石を咥えて、急ぎ足で去っていく。
アデリーペンギンにとって小石は、巣の周りを囲うための重要なツールだ。ときには他のカップルの巣から盗んでくる場合もあるという。彼らが急ぎ足なのも、ともするとそんな理由かもしれない。

水泡でできた天の川

水中を泳ぐキングペンギン

海遊館の室内には、縦に長い水槽がいくつもある。特に大型の生き物が暮らす水槽は、複数の階にまたがっている場合が多い。ペンギンの水槽もその1つで、5階からは水中を泳ぐペンギンを観察することができる。

闇に浮かぶペンギンは、まるで宇宙を飛んでいかのようだ。その背中から放出された微小な泡は、天の川のように広がってキラキラと輝いていた。

番外編:海遊館のおすすめ展示

回遊するジンベイザメ

海遊館のジンベイザメ

海遊館で最も有名な巨大水槽。
深さ9メートル、水量5,400トンの水槽は、世界最大の海である太平洋を再現している。

ジンベイザメの正面顔
旋回する2頭のジンベイザメは、水槽の中でも一際目立つ。この大きな口で周囲もろとも大量のプランクトンを飲み込み、エラから水を吐き出す。濾過されて口の中に残ったものが彼らの餌となる。

悠々と泳ぐ巨大なエイ
太平洋の水槽には、他にも様々な生き物が暮らしている。スロープに沿ってプールを下れば、沢山のエイが羽ばたくように優雅な泳ぎを見せてくれる。

海面と海底で生き物の顔ぶれが違うのは、自然界も同じこと。まるで海中ダイビングを楽しんでいるかのような、リアルな興奮を味わっていただきたい。

ワモンアザラシは芸達者

海中コーナーから見るワモンアザラシ

これが現実なら、どれくらい寒いのだろう。北極圏の海中コーナーでは、リアルな海氷のオブジェが臨場感を掻き立てる。
途中、ぽっかりと開いた穴から見えるのはワモンアザラシの姿だ。彼らは前足ヒレの爪で氷に円錐形の穴を掘り、空気を補給しながら海中の広い範囲を移動する。
そんな彼らは、実に愛嬌たっぷりだ。

水面から頭を出すワモンアザラシ
水から頭だけ出した姿は、もはや海坊主そのもの。

スライムのようなアザラシ
正面から見ると、スライムに化けてしまう。

前ヒレを振るワモンアザラシ
見る角度によって、別の生物に見えてしまうワモンアザラシ。実はかなりの芸達者で、お食事の時間は飼育員さんと一緒にトレーニングする様子を見学できる。
バンザイをしたり、手を振ったり、短い前ヒレを使った芸をどうぞお見逃しなく!

 

Text:水鳥 るみ(フリーランスライター)

海遊館(大阪府)の基本情報

下記の情報は、2017年5月現在の情報です。

●ホームページ
http://www.kaiyukan.com

●ペンギンの種類
イワトビペンギン
キングペンギン
アデリーペンギン
ジェンツーペンギン

●営業時間
通常:10:00~20:00 (最終入館は閉館の1時間前まで)
※イベントや祝祭日などは、営業時間を延長する場合があります

詳細は海遊館のホームページへ

●入場料金
大人(16歳以上):2,300円
子ども(小・中学生):1,200円
幼児(4歳以上):600円
シニア(60歳以上):2,000円

※年間パスポート、セット券のご案内は海遊館のホームページへ

●アクセス
〒552-0022 大阪府大阪市港区海岸通1-1-10

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