ゴーゴー・ペンギンの来日ライブ|美しいジャズに酔いしれるブルーノートの夜

      2016/11/01

マン・メイド・オブジェクト

ペンギンから始まるサクセスストーリー

彼らについて知ったのは、インターネットの記事を流し読みしていた時のことだった。
ゴーゴー・ペンギン。なんて前向きで、可愛らしい響きだろう。分厚い氷の上を、崖の上や海岸を、ペンギンたちが列になって行進する姿が目に浮かぶようだ。
しかしそれが、新鋭のジャズトリオの名前だと分かった時、私の頭は少し混乱した。ジャズとペンギンの間に、全くと言っていいほど接点がないように思えたのだ。彼らのことが気になり、youtubeでその音楽を聞いた私は、その場に放心したように立ち尽くした。

ーこんなにも心を打つ音に出会ったのは初めてだ。

私はこれまで、ジャズに対してどこか近寄りがたい印象を持っていた。よほど音楽が好きでないと、その良さに気づくことはできない、まして語るなど滅相も無い、そう思っていた。
今は違う。彼らが刻むリズムがスッと心に傾れ込み、胸が熱くなるのを感じる。ピアノの美しい音色に様々な楽器が共鳴し、それはまるでワインとフルコース料理のマリアージュだ。音楽については浅学非才であるが、このジャズトリオは理屈抜きに素晴らしい、そう直感した。

ゴーゴー・ペンギンは、イギリスのマンチェスターを拠点に活動するトリオである。メンバーは、クリス・アイリングワース(ピアノ)、ロブ・ターナー(ドラムス)、ニック・ブラッカ(ベース)の3人。ジャズをベースにクラシック、テクノ、ドラムベース、ダブステップなど多種多様な音楽からインスピレーションを受けた彼らは、“アコースティック・エレクトロニカ・トリオ”と呼ばれている。私なりに解釈すれば、“現代音楽の宝石箱や〜”ということだろうか。

彼らの活動拠点を聞いて、ペンギンとの接点が少し見えてきた。何しろ、彼らはイギリスの出身なのだ。ペンギンの住処である南極に近い島々を領有するイギリス人が、ペンギンと非常に馴染み深いという見解については、過去に「「ウォレスとグルミット」の傑作シリーズ丨ペンギンに気をつけろ!」の中で触れた通りである。
トリオ名を決めた際の具体的なエピソードについて、ラジオのトーク番組の中で次のように語られていた。

クリス:3人が急に集まってショーをすることになり、名前を決めないといけなくなった。オペラに使われていたペンギンがその場にあったから、「じゃあペンギンにしよう!」となった

ロブ:ペンギンだけだとカッコ悪いから何かつけようと、頭に“ゴーゴー”をつけた。
出展:J-WAVE:「ACCOUSTIC COUNTY」

意外と適当に決められたという事実に、少しだけがっかりする。しかし、これはイギリスだからこそ起こりえたラッキーな偶然と信ずる。たまたま楽屋にペンギンのぬいぐるみが置いてあるなんて、滅多ないことだろうから。
下記に掲載する曲は、2作目のアルバム『v2.0』に収録されている。このアルバムでイギリスの音楽賞「マーキュリー・プライズ」にノミネートされた彼らは、ヨーロッパ全体で一気に注目を集め、晴れてブルー・ノート所属アーティストの仲間入りを果たすこととなった。
こうして彼らの音楽は海を越え、遠い島国に住む一人のペンギン好きの心を捉えたというわけだ。

GoGo Penguin – Hopopono

GoGo Penguin – Garden Dog Barbecue

ようこそ日本へ!ジャズライブ@BLUE NOTE TOKYO

ゴーゴー・ペンギンのジャズライブ@ブルーノート東京

ゴーゴー・ペンギンのジャズライブ@ブルーノート東京

ゴーゴー・ペンギンが来日したのは、2016年の4月のことだった。2016年1月27日に発売されたメジャー・デビュー作『マン・メイド・オブジェクト』を携えての初来日である。ライブは、青山にある「ブルー・ノート東京」で開催された。

ブルー・ノート東京には、キューバ音楽を聞く為に前にも一度来た事があった。幼少期にピアノを習って以来、音楽とは縁なく過ごし、歌手のライブにさえほとんど行った事がない私だが、前回のライブでこの場所の雰囲気にすっかり魅了された。居心地がいいのとは少し違う。重厚な扉を開け、音楽通のオーラ漂う紳士淑女の皆様に並び、地下へと続くほの暗い階段を降りていく。そこには別世界が待っている。
音楽を楽しむために熟考された席の配置、音楽の共に相応しいお酒と食事、音楽に合わせた照明と演出。それは私にとってあまりにも非日常で、背筋がピンと音を立てて張るようだ。聴覚だけでなく、視覚、味覚など五感全てが刺激され、自分の中の新しい自分が目を覚ます。

夫と共に席につき、ドリンクのメニューを眺める。最初に目に飛び込んできたのは、このライブのために特別に作られたカクテル、その名も「GOGO PINK-GIN」だ。「PENGUIN」と「PINK-GIN」、ゴロの掛け合わせに思わず笑みがこぼれる。ロンググラスでサーブされたカクテルは、淡いピンク色をして美しい。一口飲むと、グレープフルーツのような柑橘系のフレッシュな風味が口全体に広がる。ジンをベースにした苦みの中に、ほのかに甘い香りがする。ライブが開催された4月にちなんで、桜の香りを添えているらしい。存在感のあるジンがフレッシュな風味を纏い、味わいの余韻が続く。まさにゴーゴー・ペンギンのイメージにふさわしい特別な一杯である。

ライブが始まると、グラスを持つ手は止まってしまう。力強いパフォーマンス、気取る事のない立ち振る舞い。彼らが奏でるメロディーは、観客一人一人の心に入り込み、会場は彼らの演奏に合わせて小刻みに波うつ。
彼らの出世作『v2.0』同様、新作の『マン・メイド・オブジェクト』も、斬新でクールな楽曲で溢れている。最後にその中の1曲、ライブ中にも演奏された「All Res」をご紹介しよう。

ミュージックビデオに登場するのは、折り紙で出来たような立体的なペンギン。白黒の映像の中で、ペンギンがクルクルと回っている。曲が最後に向けて盛り上がりを見せると、ペンギンは様々な色で照らされる。
彼らはまだ何者でもなく、同時に何者でもあり得る。様々な手法を駆使する彼らは、音楽の秘めたる魅力を鮮やかに照らすだろう。

GoGo Penguin – All Res

 - ペンギン動画

        

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