ゴーゴー・ペンギンの来日ライブ|美しいジャズに酔いしれるブルーノートの夜

      2017/04/28

ペンギンから始まるサクセスストーリー

彼らについて知ったのは、インターネットの記事を流し読みしていた時のことだった。
ゴーゴー・ペンギン。なんて前向きで、可愛らしい響きだろう。分厚い氷の上を、崖の上や海岸を、ペンギンたちが列になって行進する姿が目に浮かぶようだ。
しかしそれが新鋭のジャズトリオの名前だと分かった時、私の頭は少し混乱した。ジャズとペンギンの間に全くと言っていいほど接点がないように思えたのだ。彼らのことが気になり、youtubeでその音楽を聞いた私は、その場に放心したように立ち尽くした。ひとつひとつの音が胸に染み入り、心が震えるのを感じたからだ。

これまでの私は、ジャズに対してどこか近寄りがたい印象を持っていた。ほとんど聞く機会がなかったばっかりに、食わず嫌いならぬ聞かず嫌いの状態に陥っていた。
しかし今は違う。ピアノの美しい音色に様々な楽器が共鳴する彼らの音楽は、多国籍料理のような面白みと、高級フレンチのような繊細さを併せ持っている。私と同じようにジャズに苦手意識のある方にも、とにかく一度聞いてみて欲しい。斬新かつ美味なフルコースを味わう満足感を、きっと感じてもらえることだろう。

ゴーゴー・ペンギンは、イギリスのマンチェスターを拠点に活動するトリオである。メンバーは、クリス・アイリングワース(ピアノ)、ロブ・ターナー(ドラムス)、ニック・ブラッカ(ベース)の3人。ジャズをベースにクラシック、テクノ、ドラムベース、ダブステップなど多種多様な音楽からインスピレーションを受けた彼らは、“アコースティック・エレクトロニカ・トリオ”と呼ばれている。私なりに解釈すれば、“現代音楽の宝石箱や〜”ということだろうか。

彼らの活動拠点がイギリスだと聞いて、ペンギンとの接点が少し見えてきた。イギリス人のペンギン好き疑惑については、「ウォレスとグルミット」の傑作シリーズ丨ペンギンに気をつけろ!」の中で触れた通りである。

トリオ名を決めた際の具体的なエピソードについて、ラジオのトーク番組の中で次のように語られていた。

クリス:3人が急に集まってショーをすることになり、名前を決めないといけなくなった。オペラに使われていたペンギンがその場にあったから、「じゃあペンギンにしよう!」となった

ロブ:ペンギンだけだとカッコ悪いから何かつけようと、頭に“ゴーゴー”をつけた。
出展:J-WAVE:「ACCOUSTIC COUNTY」

意外と適当に決められたという事実に、少し拍子抜けする。しかし、これはイギリスだからこそ起こりえたラッキーな偶然だと信じたい。たまたま楽屋にペンギンのぬいぐるみが置いてあるなんて、滅多ないことだろうから。

下記に掲載する曲は、2作目のアルバム『v2.0』に収録されている。このアルバムでイギリスの音楽賞「マーキュリー・プライズ」にノミネートされた彼らは、ヨーロッパ全体で一気に注目を集め、晴れてブルー・ノート所属アーティストの仲間入りを果たすこととなった。
やがて彼らの音楽は海を越え、遠く日本に暮らす一人のペンギン好きの心を捉えたというわけだ。

GoGo Penguin – Hopopono

GoGo Penguin – Garden Dog Barbecue

ようこそ日本へ!ジャズライブ@BLUE NOTE TOKYO

ゴーゴー・ペンギンのジャズライブ@ブルーノート東京

ゴーゴー・ペンギンのジャズライブ@ブルーノート東京

ゴーゴー・ペンギンが来日したのは、2016年の4月のことだった。2016年1月27日に発売されたメジャー・デビュー作『マン・メイド・オブジェクト』を携えての初来日である。ライブは青山にある「ブルー・ノート東京」で開催された。

重厚な扉を開け、音楽通のオーラ漂う紳士淑女と並び、地下へと続くほの暗い階段を降りていく。そこには別世界が待っている。
音楽を楽しむために熟考された席の配置、音楽の共に相応しいお酒と食事、音楽に合わせた照明と演出。それは私にとってあまりにも非日常で、背筋がピンと音を立てて張るようだ。聴覚だけでなく、視覚、味覚など五感全てが刺激され、自分の中の新しい自分が目を覚ます。

夫と共に席につき、ドリンクのメニューを眺める。最初に目に飛び込んできたのは、このライブのために特別に作られたカクテル、その名も「GOGO PINK-GIN」だ。「PENGUIN」と「PINK-GIN」、ゴロの掛け合わせに思わず笑みがこぼれる。

ロンググラスでサーブされたカクテルは、淡いピンク色をして美しい。一口飲むと、グレープフルーツのような柑橘系のフレッシュな風味が口全体に広がる。ジンをベースにした苦みの中に、ほのかに甘い香りがする。ライブが開催された4月にちなんで、桜の香りを添えているらしい。存在感のあるジンがフレッシュな風味を纏い、味わいの余韻が続く。まさにゴーゴー・ペンギンのイメージにふさわしい特別な一杯である。

ライブが始まると、グラスを持つ手は止まってしまう。力強いパフォーマンス、気取る事のない立ち振る舞い。彼らが奏でるメロディーは、観客一人一人の心に入り込み、会場は彼らの演奏に合わせて小刻みに波うつ。
彼らの出世作『v2.0』同様、新作の『マン・メイド・オブジェクト』も、斬新でクールな楽曲で溢れている。最後にその中の1曲、ライブ中にも演奏された「All Res」をご紹介しよう。

ミュージックビデオに登場するのは、折り紙で出来たような立体的なペンギン。白黒の映像の中で、ペンギンがクルクルと回っている。曲が最後に向けて盛り上がりを見せると、ペンギンは様々な色で照らされる。
彼らはまだ何者でもなく、同時に何者でもあり得る。様々な手法を駆使する彼らは、音楽の秘めたる魅力を鮮やかに照らすだろう。

GoGo Penguin – All Res

Text:水鳥 るみ(フリーランスライター)

 - ペンギン動画

        

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